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執筆者の写真Hal Furuta

オートマタの作り方。作家の世界観を作品に反映させた「箱書き」

ここに邦題名「釘打ちは難しい」という作品がある。 MOLENで行う英国自動人形展では必ずと言ってよいほど展示されてきた”レギィラー作品”なのでご覧になった方も多いのではないだろうか。

スプーナー作品には”箱書き”(と勝手に私が名付けたのだが)作者が自分の作品を観るものに作品への理解を深めてもらおうと紙に書いた解説文が貼られている場合がある。 ポール・スプーナー氏の場合にはその解説文を作品に貼った状態が見事にデザインされたかのように調和している。では作者はどのようなことを作品を観る人たちに伝えたかったのだろう。 ここに「釘打ちは難しい」の後方に貼られた説明書(箱書き)をあらためて読んでみよう。


「We offer a free post-card with each of our ‘Allegory of Love’ machines to show how things have changed since the days of Angelo di Cosimo aka Bronzino. 1503-1572」と書かれているが、 直訳すると「アンニョロ・ブロンゼィーノ(1503-1572)が描いた「愛の寓話」の時代から、物事がどのように変化したかを示すために、私たちは「愛の寓話」の絵葉書を無償提供する。」である。 この極めて難解な本気とも冗談ともつかぬスプーナー氏らしいメッセージを私なりに解読すると以下に詳しい。 「愛の寓話」と訳された原題は「アレゴリー・ラブ/Allegory of Love」であるが、アレゴリーとは「寓意」ともいわれ、特定のカタチや擬人化等の方法をもって愛情や、時、正義といった抽象観念を表現する方法を指す。(作品購入時に同梱されていた絵葉書)

アンニョロ・ブロンゼィーノのこの作品には、快楽、欺瞞、嫉妬、淫欲といった人間関係におけるさまざまに入り組んだ複雑な感情が隠されていると言われている。 私なりの想像と作者へのインタビューを総合するとこの作品に於いては、ポール・スプーナーは「釘打ちは難しい」に登場する人物が打ちそこなったねじ曲がった釘の背景には「ねじれたものが人間関係ではなくて良かった」というジョークを込めているのである。


しかしながら作者が本当に伝えたかったことは、ジョークそのものではなく、先に触れた“寓意”として隠された本来の意味(本質)である特定のカタチや擬人化等の方法を持って愛情や、時、正義といった”抽象観念”を表現した作品であることを読み解いて欲しい。 ということを言いたかったのではないか。それがポール・スプーナーの真の狙いだったのだと私は解釈している。


MOLEN

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