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執筆者の写真Hal Furuta

ポール・スプーナーの歯車に対する合理性とはなにか

更新日:2023年8月5日


ポール・スプーナーの最大の特徴は、洗練された技術から生み出されるフィギアの美しさと、それを動かすための機構を含めた造形上の絶妙なバランスにあると思います、と先日このblogに書きました。もしかするとFBだったかもしれません。 さまざまな方が歯車、とりわけピン歯車が手作りでそれがとても郷愁を呼ぶと言いますか、いい味出しているとのご評価をいただくことが少なくありません。ところが最近のポール・スプーナーは樹脂の歯車を使うようになりました。それもピン歯車でなく傘歯車です。 わたしは彼に、なぜそうなったのか?ということをたずねたのですが、その答えは「昔と違って、今はこうしたモノ(樹脂製歯車)が簡単に手に入るようになった。それは大変な時間の節約になる。」というものでした。

彼の作るオートマタの材質が木、金属から ▶ 木、金属、樹脂と変わったわけですが、わたしは彼の作品がそれによって、先に触れた造形上のバランスや美しさを喪失したとは考えていません。むしろ、彼が本当にやりたかったこと「機械仕掛けのジョーク」を表現する手順が合理的になり、むしろますます明確になったことを喜んでいるほどです。

話は変わりますが、スプーナー氏の作品制作前に描くスケッチブックを見せていただいたことが何度かあります。ずいぶんと奇想天外なものからシュールなものまで沢山のアイデアが絵と言葉で書かれていました。そのスケッチブックに描かれたアイデアすべてが作品になったわけではありません。 彼の作品の機構部で多用されるピン歯車は、一つ一つ木製円に、正確に長さと太さを調整したピンを打ち込んでいくのですが、これは工作機械の一種を用いて作るわけですが、大変な時間と労力を要しますので、体力を奪われることは間違いありません。 作家にしてみたら、その作業に追われなくなったことは、大きなの喜びであり、他に集中できるということになったわけで、すなわち沢山の作品を作り出すことにつながるのであれば、私は樹脂は大いに結構という考えなのです。 スプーナー氏が表現したいのは、機構やフィギアでも、モノの動きではなく「ジョーク」そのものであり、彼が思い描いたジョークを”機械仕掛け”にすることが最大の目的なのです。 ©MOLEN


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