風、太陽光、地熱といったさまざまなエネルギーは、ほとんどが電気に変換されることが前提とされていますし、わたしたちはそこに疑問を持つこともありません。
このテオ・ヤンセンの作品*ビーストは、上記の概念に疑問を提示しくれています。なぜならば風の力を電気に転換することなく作品を動かしているからです。
実は私ちの日本でもこれと似た発想を持って仕事に取り組んでいる企業があります。アイシン・エイ・ダブリュー㈱さんです。
電気や石油などのエネルギー資源、モーターなどのアクチュエーターを使わずに、載せる製品の重さとそれに反発するバネの力のみで稼働させる無動力搬送台車の開発が話題を呼びました。
人工知能が話題をさらう昨今ですが、人間の英知はこのむ動力搬送台車に代表されるように、まだまだ機構(学)を進化発展させることでエネルギーを最小限に使用することができます。
ですから、本来わたしたちが口にする「自然環境にやさしい」仕組みはこうした考え、取り組みをお手本にするべきだと思うのですが。 *テオ・ヤンセンの機構
テオ・ヤンセンはオランダ出身の芸術家です。大学で物理学を学んだ後、1975年に画家になりました。 1990年から、物理学と芸術をあわせたような、今までにない芸術的な機構作品の制作をはじめます。その作品のエネルギー源は風でした。エネルギーの伝達は独自の発想から作られたプラスチックチューブが用いられています。人間にあてはめると、神経系に相当する部分は透明のチューブやゴム紐等によってつくられ、それらは風を捕らえたのち、方向性を決める知覚機能も備えています。例えば、機構に付けられた羽を使い、風を圧縮空気として機構内のペットボトルに蓄積し、それを吐き出すことで脚を動かし、地表の障害物を脚につけた触覚で感知して方向転換を行えるようにしているのです。特筆すべきは風力を電気に変換するのではなく、風の力そのものを利用した点にあります。
MOLEN