弊社の場合、所有するオートマタの大半がイギリス製です。同じ木材であっても日本国内で作られたオートマタとはまた違った素材で作られているためか管理が難しい場合も多々あります。 使用される木材の材質そのものが日本製と異なる場合が多いことはもちろんのこと、使う場所用途によりそれにあった多品種の木材を使用するため日本独特の高温多湿という環境が与える影響は決して少なくはありません。 木質の違いは膨張度合の差に直結しやすい点も考慮しなくてはなりません。イギリスだけでなく欧州では難なく作動していた作品であっても、日本ではそれがうまく行かないという背景にはこのようなことがあるようです。
画像は三菱アルティアム(福岡市)で展覧会を行った際の作品修理の場面です。先に触れました木材の膨張は新品ほど大きくなる確率が高くこの場合も例外ではありませんでした。 いろいろ試してみたのですが、うまくいかず、思い切って作品を部品単位にまですべて分解することを決断しました。 展覧会現場での分解処置は初めてのケースだったので、部品ひとつひと慎重に外していくごとに写真に収めました。このやり方は、最初とても手間ですが、元に戻す際の時間を節約する際に大いに役に立ちます。 平ネジ1本の単位まで分解し、部品すべてを折れていないか、曲がっていないか余計なオイル等汚れがついていないかなど等、丹念に調べます。このときは幸いそうしたこともなかったので、やはり木質の湿気による膨張が原因と判断しました。 金属のシャフトが通っている木の穴に軽く紙やすりをかけオイルで滑りをよくします。した。特に今回は、タミヤのグリースが効果を発揮してくれました。現地=会場では夜中0時まで休みなく作業を続けました。 途中で作業を中断すると分解していた部品の位置を忘れるし、分解しながら頭で描いたヒントがおぼろげになり、迷いが生じるので、修理が完了するまで休むことは許されません。体力が頼みの綱となります。結局、この作業は深夜迄かかりましたが無事終了。大変ではありますが、この仕事をやっていてよかったと感じる瞬間でもあります。
MOLEN