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執筆者の写真Hal Furuta

ポール・スプーナーの歯車にみる合理性

更新日:2020年10月22日

数年前からブリティッシュ・オートマタ作家である、ポール・スプーナーは歯車を樹脂の傘歯車を多用するようになりました。それまではピン歯車を木製ベースに金属ピンを一つひとつ、工作機械を使って丹念に打ち込むという完全な手作りでしたから、ファンの驚きは少なくなかったようです。多くのご質問や、ご意見を頂戴しました。 ご質問の中には、ピン歯車から傘歯車にした理由を問われることもありますが、それはかなり”ツウ”というか玄人の方の質問だと思います。想像するに傘歯車であれば、ピンとピンの間にできる差がなくなるので歯車としての回転精度は上がりますから採用したのだと考えます。(バックラッシュの問題が解決されるわけです) ポール・スプーナにこの樹脂歯車についてたずねたことがあります。「合理的だからさ」という答えが返ってきました。話が少し飛びますが、何度か彼の作品イメージを言葉と絵で記録したスケッチブックを拝見したことがあります。そこには沢山の美しいデッサンや奇想天外なアイデアが描かれていますが、そのすべてをオートマタとして完成させているわけではありません。 何年かアイデアを温めて制作に取り掛かったものもあると聞きました。今も十年以上前のものを作品化するために考え続けているとも。ここでまた、歯車の話に戻りますが、彼の本当に目指すところはスケッチブックに描いたアイデアをオートマタという”カタチ”にすることにあるのだということです。

樹脂の傘歯車が手軽に入手できることが可能な時代に、なぜわざわざ手作りしたピン歯車に拘ること、それは乱暴な言い方をすれば、それだけ時間と気力体力の消耗につなること直結します。 歯車にこだわるのではなく、わたしは彼の一人のファンとして、彼が樹脂の歯車をつかうことでより多くのスケッチブックに描いた沢山の作品を完成して欲しいと願っているのです。

MOLEN

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