しかけ絵本の世界には、フラップ(Flap)型とよばれる極めて基礎的なしかけの手法が存在します。古くは解剖学の図や地理学など学術的な意味の深い分野で使われていました。 フラップ、英語で「片どめ式の蓋」、「はためく」などを意味するこのしかけが、子ども向け絵本として登場するのは1765年のイギリスでした。
挿絵が描かれたフラップを開閉させることで、景色や場面が変わり、視覚的にもわかりやすい物語が展開されたのです。19世紀に入ると、その発展形として、やはりイギリスで着せ替え人形や、しつけを教えるためのしかけ絵本が出版されています。
現代では、学術分野、子ども向け分野とはまったく別な方面で、新たな世界をこのフラップ型で切り開いた、ひとりの芸術家がいます。ブルーノ・ムナーリです。紙ならではの特性を生かした視覚表現は、単純でありながら物語性をそこなわず、高い芸術性を持つしかけ絵本に仕立てあげることに成功しました。