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ポール・スプーナー作品「ふぐ」に隠された秘密とは⁉

執筆者の写真: Hal FurutaHal Furuta

なぜか作者は”フグ”という毒のある魚を食べる、という日本人の食に関する考え方に執着していました。ある日、これを作品にしようと思いついたのは、自国イギリス人の食卓に上り始めたある魚の変化でした。 イギリス人は、鱈(haddock)を薫製にしたものをよく食べるようで、それはkipperと呼ばれる色がオレンジ色、あるいは黄色っぽいもの。日本人からみればそうとうに毒々しい色あいです。


フグと名付けられたこの作品には写真のような添書きがなされています。それを読ませる対象は、もちろんイギリス人。日本人ではありません。


一見すると「毒があることを知りながら、それを食する、日本人とはなんと愚かな民族なのだ」という多民族に対する今はやりの“ヘイト”的メッセージがあると誤解される方がおりますが、 いえいえ、そう安直な考えやアイロニーを、ポール・スプーナーという作家は決してしないことを、どうか最初に覚えていていただきたいのです。

逆に、これは多民族文化を嘲るイギリス人へ対しての侮蔑であり警鐘なのですから。

なぜならば、近頃のイギリス人の食卓に上る鱈の薫製は、原価を抑えるために人体に悪影響を与えるとされる着色料をふんだんに使うことで当時(作品製作時)問題になっていたからです。

それゆえ、不自然なまでに薫製色を強調したオレンジ色の魚が河豚として描かれているのです。 つまり他国民(この場合日本人ですが)の、毒があると理解していながら食べる食文化を軽蔑しておりいかにも自分たちイギリス人は高尚な民族だと言わんばかりの態度はいかがなものか? イギリス人も価格が安いという理由で健康被害のリスクが高い商品=鱈の薫製を食べているではないか。という皮肉が込められているのです。 ばかばかしいけれど、複雑で考えさせられる話であるがゆえに、ポール・スプーナーらしい魅力の一つになっています。


 
 
 
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