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山羊とピアノ/ Goat at tha Piano
ポール・スプーナー/マット・スミス
素材|木、金属
本作は、スプーナー氏が繰り返してきたテーマである「悪ふざけ(Goat)」を題材にした作品のひとつです。
制作のモチーフとなったのは作家自身の家庭生活にあり、当時まだ小さかった彼のお子さんが、自宅のピアノをおもちゃにして遊んでいた光景がモデルとなっています。
ハンドルを回すと、ピアノの前に立ったヤギが、無邪気で予測不能な動きを見せますが、ヤギが手にしているのは重たい「砂を詰めたソックス」でした。
それを使って鍵盤をひっぱたくように叩く様子は、音楽の演奏というよりは、むしろ奔放な騒音の再現に近いものです。ピアノの上でその様子を眺めている猫の表情からは、静寂を破られた困惑さえ伝わってくるようです。
ここで演奏者としてお子さんそのものではなく「ヤギ」が配されている点に、スプーナー氏らしい知的なひねりが効いています。西洋において奔放さや逸脱の象徴とされるヤギを自身の子供に見立てることで、教育や秩序を介さない純粋な遊びの中にある、制御しきれないエネルギーを象徴的に描き出しています。
露出した複雑な機構部は、ピアノという精密な楽器と、ヤギがもたらす不規則な衝撃という対照的な要素を、木工と金属の連動によって見事に統合しています。自身のプライベートな思い出を起点としながらも、それを「ヤギ」というフィルターを通すことで、普遍的な遊び心とアイロニーを湛えた傑作に仕上がっています。



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