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スイス・アーミーナイフ/ Swiss army knife
ポール・スプーナー/マット・スミス

1989年制作 素材|木と金属

本作は、世界的に知られるスイス製の多機能ナイフを題材にした自動人形です。
しかし、赤いハンドルから突き出しているのは、本来の金属製の道具ではありません。
 

ハンドルを回すと、ナイフの各パーツに見立てられた「黒い影」が、不規則に出たり入ったりを繰り返します。よく観察すると、それらがエジプト神話に登場する死者の守護神、アヌビスの頭部や手足であることに気づかされます。
 

本来、十徳ナイフは生き延びるための道具ですが、そこに「死」を司る神を紛れ込ませる点に、スプーナー特有の逆説的なユーモアが光ります。アヌビスの鋭い耳や鼻が、ナイフの部品として完璧に化けている様は、視覚的な快感とともに、道具の機能性に対する皮肉めいた問いを投げかけているようです。
 

露出した駆動部は、アヌビスの各部位を正確に動かすための複雑な仕掛けを視覚化しています。

日常に溢れる工業製品の中に、古代の神々や不穏な暗喩を鮮やかに変装させてみせる、スプーナーの真骨頂とも言える作品です。

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