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ご主人様の宝箱/The Miser's Deathbed|ポール・スプーナー/マット・スミス

2000年制作 素材|木、金属
 

本作は、欲深い「守銭奴」の最期の瞬間を扱った、やや道徳的教訓をテーマとした自動人形です。
 

舞台は、まさに息を引き取ろうとしている主人のベッドサイド。
主人は死の直前まで財産を手放さず、足元に宝箱を置いています。

その傍らでは、召使が主人の死を待ち、機をうかがっていて、ハンドルを回すと、召使は主人の目を盗んで宝箱に手を伸ばします。しかしその瞬間、死にかけていたはずの主人が突如として身を起こし、宝を守ろうと反応します。

召使は身を引き、やがて再び機をうかがう——この一連のやり取りが反復されます。

ここで示されているのは、単なる強欲さや浅ましさの対比ではありません。

死という不可避の状況に直面しながらも、所有への執着から離れることができない人間の終着が、瞬間的な動作として凝縮されていますが、重要なのは、この反応が熟慮の結果ではなく、ほとんど反射に近いかたちで現れている点にあるのです。

生命が尽きようとする局面においても、所有を守ろうとする衝動だけが鋭く作動し続けています。
その不均衡が、この場面に独特の緊張を与えています。
 

作品は、この「接近—反応—退避」という関係を正確に繰り返し続けます。機構として特筆すべきはカムの形状です。召使の行為と主人の反応が反転する瞬間を制御しており、物語の核心を運動として成立させる重要な役目をはたしています。
 

本作は、死という主題を扱いながら、道徳的な結論を提示するというよりも、むしろ、その間際まで何かを手放せないという点で、人間の行為が他者からはどのようにみえるのか。それを、簡潔な機械運動の中に示していると言えるようです。

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