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本作は、スプーナーの息子が通っていた小学校の校長への贈り物として考案されました。

校長の趣味が水泳とヨガであることから、どちらかと言えば表現しやすい水泳が主題に選ばれています。
 

椅子を使った人物が、空中でクロールの動きを繰り返します。
両手で水をかく腕の運び、リズミカルな足のバタつき、そして息継ぎのたびに顔を上げる所作。

その一連の動作は、驚くほど「それらしく」再現されています。

しかし、この人物は実際に水の中にいるわけではありません。

これは水のない場所で行われる、泳ぎの「練習」あるいは「イメージ・トレーニング」の光景です。
本来、水という抵抗があって初めて成立するはずの泳ぎが、その前提条件を欠いたまま、空間の中で完結しています。

 

特筆すべきは、この「練習」というシミュレーションが、実際の水泳以上に純粋な「泳ぎの形式」を体現している点にあります。
水温や浮力の空中で、この自動人形は現実の水泳では到達し得ないほどに整った、無機質で完璧なフォームを刻み続けます。

 

後年、スプーナーはアヌビスを用いた作品でヨガの動きをも実現しますが、本作において「泳ぎの純粋な運動」だけを抽出した試みは、模倣が実像を凌駕してしまうという、スプーナー独特の「機械仕掛けの諧謔(ユーモア)を露呈させているようです。

オートマタ 水泳01.jpg
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