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  • 執筆者の写真Hal Furuta

オートマタの作り方|モンマルトルのアヌビス

更新日:2020年10月9日

ポール・スプーナーは一時期このアヌビスに固執したことがあります。  その当時はどの作品もアヌビスがモチーフになっており、おそらく彼の頭のなかはアヌビスで一杯だったことでしょう。



ところでこのアヌビスとは誰なのか?実は古代エジプトの神話に登場する冥界の神とされています。ミイラを施術する際に、あるいは死者を冥界に送る祝詞(のりと)をあげるときに、アヌビスの仮面を被ったという伝承が残されています。

本作もそのなかのひとつです。オシャレをしたアヌビスが、コンチネンタル・ブレックファーストを楽しもうとパリのモンマルトル地区のカフェへやってきました。 ところが、優雅な一時を過ごすはずのアヌビスに、一匹のハエが現れます。このハエを何とか追い払おうと考えます。手に持った白い手袋でハエを叩こうとするのですが、何度やってもうまくいきません。 コーヒーをスプーンでかき回しながら、ハエを追い払おうとするアヌビスの姿に、彼の苛立ちが垣間見えるようですね。 単にハエを追い払うだけの仕掛けであれば、おそらくそれは見る人たちの心をつかむことは難しいのではないでしょうか?  スプーンをかき回している様子を加えることで、アヌビスのイライラした心が感じられ作品に複雑さというかより深い味わいが生まれているのだと思います。ちょっとした工夫というか一手間が大事だということですね。


「モンマルトルのアヌビス」

1989年 木、金属

©Paul Spooner &Matt Smith

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